ポスター貼りの外部委託などを業者に依頼するための費用の支出は適法か?公職選挙法が規制する「選挙運動のために使用する労務者」に対する報酬制限との関係について考えて発信します!(公職選挙法197条の2)

千葉・市原出身|36歳・3児の父
弁護士兼政治家の大すきゆうやです。

先週も注目の市長選挙がありました。

大阪府の四条畷市の選挙です。

「しじょうなわて」と読みます。

選挙への注目というよりも従前から現市長の取り組みについて個人的に関心を寄せていました。

当選時、最年少の現役市長で、私と同い年であったことも、関心を寄せるに至った理由の1つです。

今回の選挙も後継者候補をインターネットで公募したり、電子投票を実施したりと、当然賛否はあるかと思いますが、少なくとも、色々とチャレンジした取り組みも実施されていた方でした。

36歳という年齢で後継に道を託すとのことですが、今後の活動にも注目したいと思っています。

さて、本日の本題に入ります。

前回の続きです。

ポスター貼り付け業者等への費用の支払いの適法性を極めて詳細に検討しています。

前回は、私が今回の選挙で掲示場へのポスター貼り等を金銭を支払って外部の業者へ依頼したことは、「選挙運動」にあたらず、「選挙運動にあたらない行為」への支払いとなるため、公職選挙法221条1項1号(買収罪)の規制する「選挙運動者」への金銭の支払いではなく、「選挙運動のために使用する労務者」への支払いとして、買収罪にあたらないことをお伝えしました。

もっとも、公職選挙法197条の2及び公職選挙法施行令129条1項2号は、「選挙運動のために使用する労務者」に対する報酬及び実費弁償額につき、最大1万5000円と規制しているのですが、当該規制との関係は、どのように考えれば良いのでしょうか。

通常のビジネスにおいて、上記各行為を外部業者に依頼する際に、請求書の金額のうちいくらが報酬であると明示されることは考えにくいです(例えば、ポスターであれば、印刷代として100万円というように計上されることが一般的です)。

しかしながら、例えば、ポスターの印刷代について、請求された100万円のすべてが印刷に要する実費であったとすれば、印刷会社としても商売が成り立ちません。

そうすると、100万円のうちのいくらかは、報酬になるかと思いますが、当該報酬が1万5000円以内ということも、一般的には考えにくいです(利益率1.5%...)。

このように突き詰めて考えると、公費負担の余地のあるビラ・ポスターなどの費用も含めて、いずれの支出も、一般常識に照らせば、「選挙運動のために使用する労務者」に対する支払いの上限額(日額1万5000円)を超過しているといえます。

では、「選挙運動のために使用する労務者」に対する支払いの上限額(日額1万5000円)を超過することによる法的効果(罰則)は、どのようなものがあるのでしょうか。

先にお伝えしたとおり「選挙運動のために使用する労務者」への金銭の支払いは、公職選挙法221条1項1号(買収罪)の規制する「選挙運動者」に対する支払いではなく、「運動買収」は成立しません。

他方「選挙運動のために使用する労務者」である外部業者が「選挙人」に当たる場合は、上限超過部分の経済的利益を選挙人に提供したとして、「投票買収」に該当する余地があると考えます。

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「選挙人」とは、

基本的に、選挙権を有する者として

選挙人名簿に登録されている者をいいます。

(公職選挙法逐条解説1892頁)

要するに、選挙区の有権者です。

収支報告書を閲覧した限りですが、地元(選挙区)の印刷会社にビラ・ポスターの作成を依頼している候補者は多く、「選挙人」に対する「財産上の利益の・・・供与」であると指摘された場合にどのような弁解をするのかと、弁護士としては法的リスクを感じました(公職選挙法221条1項1号)。

地元の業者に依頼して地域経済を活性化させることが選挙運動の慣行であるとの意見もありそうですが、そのような慣行は、まさに公職選挙法が禁止する「選挙人」に対する「財産上の利益の・・・供与」にあたるように思うため、悪しき慣行に他ならないのではないかと個人的には考えています。

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進んで、外部業者が「選挙人」に当たらない場合は、上限額を超過することによる法的効果(罰則)は特にないのでしょうか。

この点、公職選挙法247条は「出納責任者が、・・・告示された額を超えて選挙運動・・・に関する支出をし・・・たときは、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金に処する」と規定します(選挙費用の法定額違反)。

もっとも、第50回衆議院議員選挙の千葉3区で告示された選挙費用の法定額が2410万7400円ということからも分かるように、法定額を超える選挙費用を要することは、一般的な選挙活動を実施する限り想定できません(千葉県報:令和6年10月15日)。

そうすると、「選挙人」に該当しない外部業者に対して上限額(日額1万5000円)を超える報酬を支払っても、特段注意すべき法的効果(罰則)はなく、違法ではあるが許容されているといえます。

このような法的整理(解釈)については、前回の投稿で紹介した最高裁判例の事件の弁護人(刑事事件は弁護士のことを「弁護人」といいます)が、上告趣意(上告審である最高裁での主張)において「報酬及び実費弁償額が法定の額を超過することがあったとしても、・・・真実労務者として使用した者に対する限りは、法定の選挙費用超過(法第247条)など罰則規定に該ることあるは格別、違法の選挙運動者に対する報酬支払をもって律すべきものにあらざることは当然の事理である」と主張していることからも的外れな法的整理(解釈)ではないと考えています。

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最高裁判所のサイトから検索できる判例には、上告棄却となった上告した弁護人の主張は掲載されていませんが、私が普段利用している判例検索システムには、上告趣意(上告した弁護人の主張)の掲載がありました(最高裁サイト⇔判例検索システム)。

当該最高裁判決は、昭和53年1月26日に出されたものであるため、私が生まれる約10年も前の判決となりますが、判決内容を通じて、当時の弁護人と法的整理についての擦り合わせ(対話・会話)ができたような気がするときは、弁護士として、何となく嬉しい気持ちになる瞬間でもあります。

なお、当時は現代と異なり、インターネットによる判例検索システムはありません。最高裁判所で取り上げてもらうために、過去の判例と矛盾する判断が高等裁判所でなされたと主張するための高等裁判所における判例を検索も相当に難しい作業であったと思いますから、上告を実施した弁護人は相当優秀な人物であったのではないかと勝手に想像を巡らせています。

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以上

ポスター貼り業者等へ費用を支払って業務を委託することの適法性を弁護士兼政治家として、法律条文や条文解説文献、最高裁判例を存分に考えた上で発信しました。

次回は年内最後の投稿となります!
2024年の振り返りと2025年の活動予定について考えて発信できればと思います!

 

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