ポスター貼りなどを外部業者に委託するための費用の支出は適法か?公職選挙法が規制する選挙運動者に対する買収禁止との関係について考えて発信します!(公職選挙法221条1項1号)
千葉・市原出身|36歳・3児の父
弁護士兼政治家の大すきゆうやです。
本日の検討課題は、結構マニアックです。
ただ、兵庫県知事選挙で話題となっている費用支出の問題の基礎知識でもあります。
選挙に立候補しようと思って費用支出について考えたら誰でも通る疑問であるにもかかわらず、疑問に正面から回答している文献や解説がないため、この機会に考えて発信します。
早速、本題に入ります!
選挙にはお金が掛かります。
ただし、票をお金で買ってはいけません。
公職選挙法は、選挙人や選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益などを供与することやその供与を約束することを禁止しています。これに違反すると、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金となります(公職選挙法221条1項1号)。
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ちなみに、
候補者である私が公職選挙法221条1項1号に違反した行為をすると、4年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金となります(公職選挙法221条3項1号)。
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一般に「選挙人」の買収を「投票買収」といい、「選挙運動者」の買収を「運動買収」といいます(逐条解説公職選挙法改訂版1892頁)。
買収禁止の趣旨は「本来選挙人の自由な意思の表明により行われるべき選挙を不法不正な利益の授受によって歪曲しようとするもの」を制する点にあります(同1889頁)。
前者の「投票買収」が禁止される点は、容易に理解ができますが、後者の「運動買収」の禁止は、選挙活動をすべてボランティアで賄うことが現実的でないこととの関係で、非常に難しい問題を含みます。
例えば、私は今回の選挙で掲示場へのポスター貼りやビラの証紙シール貼り、ビラの新聞折込等を外部の業者に依頼しました。
そこで、選挙活動を業者に依頼しようとする場合、その費用の支出が公職選挙法で禁じられた「運動買収」にあたるか否かを検討する必要があります。
「運動買収」とは、「選挙運動者」に対する金銭等の支払をいうので、依頼する業者が「選挙運動者」にあたるかを検討します。
この点につき、最高裁判所第一小法廷判決(昭和53年1月26日)は、まず「公職選挙法197条の2が『選挙運動のために使用する労務者』を『選挙運動に従事する者』としていないこと、同法137条の2が『選挙運動のための労務』を『選挙運動』として取り扱っていないこと・・・を考慮すると、『選挙運動のための労務』とは選挙運動にあたらない行為をいい、・・・『選挙運動のために使用する労務者』とは公職選挙法221条にいう『選挙運動者』にあたらないものをいう、と解するのが相当である」と述べます。
要するに、「選挙運動のために使用する労務者」に対する金銭の支払いは、「選挙運動にあたらない行為」への金銭の支払いとなるため、公職選挙法221条の禁止する「選挙運動者」に対する「運動買収」にはあたらない旨を述べています。
そのため、次に、依頼する業者への金銭の支払が「選挙運動にあたらない行為」への支払いであるか否かを検討することとなります。
これについて、同最高裁判決は、「選挙運動とは、特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者のため投票を得又は得させる目的をもって、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘、その他諸般の行為をすることをいい」、「選挙に関し候補者のために行われる行為は、たとい機械的な労働であっても、一般には、当該候補者のため投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為であることを否定しがたく、その行為の目的いかんによつては選挙運動にあたる」としています。
そうすると、ポスター貼り等の行為も「機械的な労働であっても」、「選挙に関し候補者のために行われる行為」ですから、「選挙運動」にあたるように思います。
しかしながら、あわせて、同最高裁判決は、「選挙演説のような、選挙民に対する投票の直接の勧誘行為については、その行為に出ること自体をもって右目的があるものと認定することができるが、ポスター貼りや葉書の宛名書のような、選挙民に対する投票の直接の勧誘を内容としない行為については、これらの行為を自らの判断に基づいて積極的に行うなどの特別の事情があるときに限り、右目的があるものと認定することができる」とも述べています。
要するに、
選挙民に対する投票の直接の勧誘を内容としない行為は、自らの判断に基づいて積極的に行うなどの特別の事情がある場合に限って、選挙運動にあたるとしています。
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余談です。
「右目的」とは
昔の判決が縦書きであったことによります。
現在の横書きの判決からすると、
「上記目的」という理解で良いです。
上記最高裁判決における
特定の公職の選挙につき、
特定の立候補者又は立候補予定者のため
投票を得又は得させる目的
を同判決は「右目的」と述べています。
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そうすると、私が今回の選挙で外部の業者に依頼した掲示場へのポスター貼りやビラの証紙シール貼り、ビラの新聞折込などは、いずれも選挙民に対する投票の直接の勧誘を内容としない行為であり、かつ、私の指示に基づくため、自らの判断に基づいて積極的に行うなどの特別の事情もないですから、選挙運動にあたらないこととなります。
以上のような理由から、私が今回の選挙で掲示場へのポスター貼り等を金銭を支払って外部の業者へ依頼したことは、「選挙運動」にあたらず、「選挙運動にあたらない行為」への支払いとなるため、公職選挙法221条1項1号(買収罪)の規制する「選挙運動者」に対する金銭の支払いにはあたらず、「選挙運動のために使用する労務者」への支払いとして、公職選挙法221条1項1号(買収罪)に違反しないこととなります。
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もっとも!公職選挙法197条の2は、「選挙運動のために使用する労務者」に対する金銭の支払いであっても、支払える報酬及び実費弁償額につき、制限をしています。
具体的には「選挙運動のために使用する労務者」については、1日につき最大1万5000円(なお、労務者に弁当を提供した場合は報酬から弁当の実費相当額を差し引く(公職選挙法施行令129条2項))であれば報酬を支払うことができるとされています(公職選挙法施行令129条1項2号)。
では、私が今回の選挙で外部の業者に依頼した掲示場へのポスター貼りやビラの証紙シール貼り、ビラの新聞折込のみならず、いずれの候補者も利用している公費負担の余地があるビラ・ポスターの印刷代の支払いは、「選挙運動のために使用する労務者」に対する報酬等を制限する規定との関係で、どのように考えれば良いのでしょうか。
長くなりましたので、
続きは次回といたします。
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